COLUMN
三重県で注文住宅や新築一戸建てを建てるなら森大建地産

コラム

三重で住宅を建てる際に地産地消に取り組む理由

2022.11.29

近頃、全国展開のスーパーなどでも、「地産地消」や「身土不二」という言葉を掲げて、
地元産の農産物が並ぶようになりました。
以前は、農産物直売所など一部だけで販売されていましたが、
地元産の食材を使うことで、安心感を得られることはもちろん、子どもたちに郷土の食文化を伝える「食育」や、
地元農家を応援することにも繋がると、積極的に地元食材を取り入れる人が増えています。
我が家の食卓にも、伊賀産のお米や野菜が並ぶことが多くありますが、
旬の食材は、味もピカイチで、故郷を誇らしく思うものです。

 この「地産地消」という考え。弊社では家づくりにおいても積極的に取り入れたいと思っています。
そう、家の主な材料である木材を、地元材や国産材で賄おうという取り組みです。
 家づくりにおいて、重要視することといえば、予算や外観、間取りなどが一般的で、
「木材の産地」を気にかける人は少数にすぎません。
それなのになぜ、わたしたちが住宅の「地産地消」に取り組むのか。
それは、日本の森林が危機的な状況に陥っているからです。

日本の森林の現状

 日本の国土の約三分の二(2508万ha)は森林です。
普段、何気なく目にしている山々ですが、木々が自生する自然林と、
スギやヒノキなどを人の手によって植栽された人工林とがあり、人工林が森林全体の約4割(1029万ha)にのぼります。
数字上では、先進国中、トップクラスの森林資源を持っていることになるのですが、
残念ながら、その資源は眠ったまま生かされず、時には災害をも引き起こす要因になっているのです。

 古くは奈良時代から始まったとされるスギやヒノキの植林ですが、戦後の経済成長に伴う住宅需要の増加から、
国策として造林が推進され、人工林が大規模化しました。
 そんな最中、1964年(昭和39)に木材の輸入が全面自由化され、安い外国産材が一気に台頭し、
5年後には国産材の供給量を上回るまでになったのです。

 人工林は苗木を植え付けたら、それで終わりというわけではありません。
日光が行き渡るように「下刈り」といわれる、雑草木の刈り払いや、
木が密集し過ぎないように調整する「間伐」など、成長ごとに常に人の手を必要とします。
しかも、日本の山林は急な斜面であることが多く、作業をするにも、切り出した木材を運搬するにも、
大変な労力とコストを必要とします。
 外国産材との価格競争で採算を取ることが難しくなった日本の林業は一気に衰退し、
その結果、常に人の手を必要とするにも関わらず、人工林が手つかずのまま放棄されるようになりました。

 森林というと、鬱蒼した暗いイメージを持っていませんか?
鬱蒼とした森林が広がっている山は、あまり健康状態のよい山とは言えません。 
適正な間伐が行われている森林は、地面まで日光が届くように立木密度が調整されているので、
明るく、シダ植物などの下草が地面を覆っています。木がしっかりと根を張って成長しているので、
見た目にも、どっしりとした印象です。
対して、適正な間伐が行われていない森林は、木が密集しているため、地面まで日光が届かず、
鬱蒼とし、表土が剥き出しになっている箇所もあります。根も十分に張れず、ひょろひょろと貧弱な印象の木が密集し、
残念ながら、根から倒れてしまった木々も目につきます。
しかも、一度、このような状態に陥ってしまうと、後から間伐などで調整しても健全な状態に戻すのは難しくなります。

森林が持つ役割と影響

 このような不健康な森林がわたしたちの生活に与える影響は少なくありません。
ここで、森林が持つ役割をいくつか挙げてみます。
・土砂崩れや土砂の流出の防止
・木材の供給
・水源地として水を供給
・野生動物のすみか
・二酸化炭素を吸収し、酸素を供給
・レクリエーションを行う場所
どれか一つでも失ってしまえば、わたしたちの生活に支障をきたします。
 2011年(平成23)8月の台風12号による紀伊半島大水害を覚えているでしょうか?
和歌山、奈良、三重の3県の一部で総雨量が2000ミリを超える大雨となり、熊野川が氾濫。
3県各地で洪水被害が発生しました。
土砂ダムを形成するような大規模な土砂崩れもあちこちで起こり、その中には放棄林と思しき個所も見受けられました。
もちろん、想定を超えるような大雨が要因ではありますが、下草が生えず、根が貧弱な森林は土砂崩れを起こす危険性が高くなります。
きちんと手入れが行き届いていれば、災害の規模を小さくできたのではないか。そう考えずにはいられません。
 他にも、春になると悩まされる人が多い花粉症も、伐採されず、増えすぎたスギやヒノキから大量に花粉が飛散することが要因となっています。
花粉量を抑えたスギも開発されていますが、慢性的な人手不足に陥っている林業において、植え替えには相当な時間を要するでしょう。
 また、獣害被害が深刻な鹿の増加も、樹木の新芽を好んで食べる鹿にとって、人工林が格好の餌場となり、繁殖が進んでしまったのかもしれません。
 自然を人の手によって作り変えたうえ、放棄してしまったことによるしっぺ返しとも捉えられますが、
森林は成長サイクルが長く、今日、明日でどうこうできるものではありません。
今ある資源をどう生かしていくかを考える必要があります。

故郷の山に対する思い

 弊社のある伊賀市も四方を山に囲まれ、古くから林業が盛んな地でした。
都のあった京都や奈良から近く、寺や城の建立に木材を供給したことに始まり、
薪炭といった燃料の生産や、明治以降は公有林が整備され、植林が盛んに行われてきました。
伊賀地区もご多分に漏れず、林業は衰退してしまい、伐採に適した林齢に達しているにもかかわらず、
そのままになっている人工林が多く見られます。
目の前にこれだけの資源があるのなら、それらを生かすことは、建築に携わるものとして、ひとつの使命だと思います。
その昔、学校の校舎を建設するために、「学校林」という専用の植林地があったという話を聞きました。
植林された木々には、先人からの将来を案じる思いが込められているように思います。
林業における後継者の育成や、加工、流通など問題はまだまだ山積みですが、
地元材や国産材のニーズを高め、故郷の山を健全な状態で、次の世代にバトンタッチしたいと思っています。

国産材は高い?諦めるのはまだ早い!

 以上のことから、地産地消を家づくりにも取り入れたいと考えていますが、
木材という自然素材に大きな魅力を感じているからこそ、その考えに辿り着きました。
そのため、シックハウス症候群という言葉が知られるようになり、
自然素材を用いた家づくりに、関心が高まってきていることは歓迎すべき状況だと思っていますが、
依然として、「国産材は高い」というイメージを持つ人は少なくありません。
もし、コストの面で国産材を諦めようとしているのなら、それはとても勿体ないことです。
まず、外国産材と国産材の価格差は、徐々に縮まってきています。
もちろん、銘木といわれるような「吉野杉」や「木曽檜」なら話は別ですが、一般的なものであれば大差ではありません。
その上、安価な外国産材のなかには、発展途上国の自然林を伐採したものが含まれていることがあり、
安さを優先することが環境破壊に繋がっている可能性もあります。
そして、木材にはグレードがあります。グレードといっても、強度などの品質面ではなく、見た目で分けられるもので、
表面にまったく節のない「無節材」は最も価格が高く、節の大きさや数で価格が変動します。
他にも、「あかね材」という虫食いの跡があるものの、強度にはまったく問題のない木材もあります。
適材適所という言葉通り、あまり目につかない場所に節の多い木材やあかね材を使えば、コストを抑えることが可能です。
節模様があると目障りだったり、目が回るという方もいますが、一部だけを無節材にするだけでも部屋の印象はがらりと変わります。
そういった工夫は、弊社のようなベテラン大工を抱える工務店の得意とするところです。

「三重の木認証制度」を知っていますか?

 また、三重県には「三重の木認証制度」というものがあり、その中に、住宅ローンの金利を引き下げる制度もあります。
「三重の木」とは、三重県内で育成され、合法的な伐採が証明されており、なおかつ品質面でも一定の基準を満たしている木材のことで、
消費者と住宅建築に携わる人が分かりやすく、安心して利用できるように、「三重の木認証制度」が設けられました。
先に日本の森林の約4割が人工林と述べましたが、三重県においては、約6割が人工林であり、全国平均を大きく上回っています。
そのため、県産材の利用を促進するため、趣旨に賛同した県内の銀行や信用金庫が、一定量の県産材を使用した住宅に対し、
住宅ローンの金利を引き下げています。
 国策として造林が推進される以前は、切り出した木材を遠くまで運ぶ運搬技術が乏しかったため、木材も地産地消が当たり前でした。
里山の家は、その地区の山から切り出した木材で建築されているので、木材がすでにその環境に順応していて、
現在のような、乾燥や加工技術が高くなくとも、うまくいっていたのかもしれません。
そう考えると、「三重の木」の利用は、運搬によるCO2排出量削減や木材への環境的な負担軽減にも繋がります。
故郷の環境保全に貢献しながら、金利が優遇されるのはうれしいですね。

地元材のニーズを高めるために
 
 長く続くデフレ経済の中、住宅の価格競争はますます激しさを増しています。
しかし、放棄され荒廃していく森林を目にすると、安さを追求することは、憂いでしかありません。
そこで、木の家の良さや森林の持つ役割、素晴らしさを粘り強く伝えていこうと決心しました。
そのために、三重の木を使った新たなモデルハウスの建築や自社林での体験イベントなどを考案中です。
すぐに結果がでるものではないでしょうが、いつか、「木の家、よかったな」「森の中にいると癒されるな」という思い出が、
実を結んでくれると信じています。
 食だけではなく、家づくりにおいての「地産地消」のニーズが高まるよう、今後も、工務店ならではの、情報発信をしていきます。